知られざるフィリピンの教育問題と就労問題の裏側

53679

View

スポンサーリンク

Kelly Parker

フィリピンでは大学就学率は先進国と比較するとかなり低く、雇用制度に関しても様々な問題が山済みなのです。知られざるフィリピンにおける教育と就職の問題を赤裸々にお伝えします。

スポンサーリンク

やっとフィリピンも教育制度「K-12」を導入

4年前までのフィリピンにおける教育システムにおいて、義務教育期間は小学校6年と高校4年の計10年でした。そのため海外の大学に入学するには2年足りない弊害がありました。

アキノ大統領による基礎教育の拡大政策により、2012年よりK-12システムを導入。小学校6年、中学4年、高校2年の計12年の義務教育となりました。

Republic of the Philippines 「The K To Basic Education Program」
Republic of the Philippines 「The K To Basic Education Program」

K-12システムを採用している国はアメリカ、カナダ、オーストラリアなど。日本の教育制度も6-3-3制の12年制ですね。

実際には、フィリピンには中学校というものは無く、一つの高校(ハイスクール)に6年間通学することになります。ちなみに私立の学校だと初等教育(小学校)で7年制を取り入れている学校も多いです。

フィリピンではランチタイムは自宅で昼食

フィリピンでは、小学校でも高校でも両親が共働きである場合を除いて、ほとんどの学生が昼食時間で一旦帰宅します。

子供が小学生であれば、必ず親が学校まで送り迎えします。早朝の登校時、下校時、ランチタイムのお昼の往復で一日4回です。小学生の子供を持つ親はホント大変です。

フィリピンの就学率

矢野経済研究所の2013年調査結果によると、小学校児童数が約1390万人であるのに対し、高校生徒数は約680万人。この数字はドロップアウトする生徒がかなり膨大であるのを物語っています。

小学校では約30パーセントの児童が途中でドロップアウト。さらに小学校卒業後にハイスクールに進学するのは全体の50パーセントです。大学進学に至っては全体の10パーセントほどです。

ドロップアウトが多い原因としては、親が在学中に失業し経済的な理由から学業を断念するケース。そして、フィリピンでは子供が家業を手伝いし、家計をサポートしていることも多いという点です。

フィリピンでは、まだ幼い子供がマッチ売りの少女的な仕事に従事して家計を支えていることも多いのです。どうみても小学生ぐらいにしか見えない子供が、道端でピーナッツを売っている光景などをよく目にします。

フィリピンでは公立学校は授業料は無償です。しかし制服代や教科書代などは有償です。さらに、学校内の設備投資(扇風機購入など)や特別授業の寄付金の請求などがあります。

経済的な理由から、かなりの数の生徒がドロップアウトを余儀なくされている実状です。では就職に関してはどうなのでしょうか。

セブにおける就職

世論調査の方法を使って定期的に失業率を調べている民間調査機関が2013年に、18歳以上(フィリピンの成人年齢は18歳)の1550人を対象にフィリピン全土で行われました。

この調査によると「求職中」の人は27.5%。さらに年齢層別では18~24歳の52.3%が目立ち、高校、大学を出ても就職先がないという現状です。

この失業率の裏には、実はフィリピン独特の労働法の存在があります。この労働法が存在する限り、今後も失業率が下がる事はないと言われています。

参考情報:フィリピンインサイドニュース「【調査】 悪化する一方の失業率 昨年12月は27.5%

スポンサーリンク

フィリピンの労働法

労働者を守るための労働法

フィリピンの労働法では6ヶ月間を超えて雇用を継続した場合、自動的に正社員にしなければならない決まりがあります。そして正社員に一度なると労働法によりガッチリ守られる立場になります。

具体的には、正社員には13ヶ月給料という制度により、毎年12月には2ヶ月分の給料が受け取れます。また、給料の前借りも経営者に要求できるようになります。会社側の経営上の理由で解雇されることもなくなります。

経営者側から見た労働法

経営者側としては、この労働法はなんのメリットもありません。7ヶ月目の就業時から社会保険の適応。13ヶ月給料制度により毎年1ヶ月分多めの給料の支払い。さらには、正社員から「お金を貸してくれ」と催促されても断れない。経費がかさみ人員削減をしたくても社員に不手際がない限りクビにできない。

上記の理由をみても、経営者側としては明らかに正社員の雇用数を増やすことは重荷となります。

6ヶ月試用期間ルール

経営者側もバカじゃありません。そこで考えたのが「6ヶ月試用期間ルール」です。「最初の6ヶ月は試用期間ですよ」として契約期間に制限を設けたのです。経営者は契約期間が過ぎると、ほとんどの場合は再契約はしません。それは解雇ではないのです。「契約終了」による退職なのです。

優秀なスタッフに仕事を継続して欲しい場合はどうするのか?契約期間満了後、2週間~1ヶ月間は再契約をせずに時間をあけます。その後、新しく契約をするのです。2週間以上あけるのは、継続した契約とみなされる可能性を避けるためです。

6ヶ月契約システムから生じる問題点

6ヶ月後には誰もが失業するシステムです。このシステムが存在する限り失業率が低下することはありません。「どうせ、ここで仕事をするのは6ヶ月間」という意識があるので労働意欲も低下します。それにより生産性の低下やクオリティの低下を招きます。

本来、労働者を守るために作られた労働法が、実は労働者自身の首をしめる結果となり、強いてはフィリピンにおける産業の質の低下という問題を生みだしてしまったのです。

参考情報1:フィリピンでは明日のしごとはムリなんです。
参考情報2:マニラ暮らし、二度と来ないだろう「フィリピン・マニラ」

優秀なフィリピン人は海外へ

外資系コールセンターであれば、運営会社の雇用制度で働くことができますが大学卒がほとんどです。大卒でなくても英語ができて仕事に意欲的な人だと海外に出稼ぎに行きます。フィリピン国内ではやる気が発揮できる雇用システムじゃない。そこで海外に行くのです。

給与面でも海外の方が稼げます。今、フィリピンが抱えている問題は、この海外への頭脳流出なのです。前回の記事「セブ留学ってどうなの?フィリピン英語は訛ってないの?」の中で詳しく述べましたが、ビジネス英語も堪能である優秀なフィリピン人の多くが海外で活躍しています。

フィリピン国内では、水を得た魚にはなれないのです。自分の能力を発揮して悠々と泳げる場所がフィリピン国内にはないのです。

最後に

もっと外資企業がフィリピンに進出し、労働法も改正されれば、今のこの状況も大きく変化するかと思います。来年、アキノ政権が幕を閉じます。新しい大統領に期待したいところです。

しかし、ここセブで生活をしていても、そんな深刻な状況などは微塵も感じないのですよ。ローカルの方は誰一人として泣きそうな深刻な顔などしていません。みんな、明るいんですよね。

ローカルは皆明るい
Dondy Razon

私もローカル度が日に日に増してきたせいなのか、なんだか何が深刻な現状なのか分からなくなってきています。何が起こるか分からない(停電、洪水等)セブでの生活。アクシデントに対しての一種の慣れなのでしょうか?平和ボケならぬ、困難ボケなのか?

しかし、さすがの私もこの記事を書いていると、深刻なフィリピンの現状を再認識し、気分も滅入ってきました。時の流れに身を任せるしか能のない、ちっぽけな私。ここはセブ。とりあえず、ひと泳ぎして海の流れに身を任せたいと思います。では。

スポンサーリンク

この記事に関するキーワード

  • まとめ
  • 教育
  • 仕事
  • 正社員
  • 就労
  • 労働法
  • 契約社員
  • K-12
  • 失業率

この記事を書いた人

ケン
ケン

日本の大学を卒業後に、フランス、イギリス、アメリカを渡り歩き、気がつけばセブで生活をしている50代半ばのオッサンです。酒とビリヤードを愛する男。セブでは、日本人よりフィリピン人のほうが友達は多いです。ちょい悪オヤジになりきれない、か弱いオヤジ。今までの経験を通して、私らしい情報発信ができれば幸いです。

留学希望者におすすめ各国の留学情報を徹底解説!